金メッキのコサージュ
海風で色が褪せたコサージュ。千の波を翔ける男でも、大事にする飾り物と思い出がある。副船長と船師を乗せた艨艟が再び出航した。船師のばかげた望みのため、思い出に眠る故郷のために、副船長は下手な鼻歌を口ずさんで鯨と波に応える。「一族の名を捨てた賊人が命取りにきた魔女と流浪(できなかった)」「一族の名を得られなかった弟はやがて族長となる(だろうか)」「口に出せない歌詞…真実に背き、幻想を選んだのか」「全てを失い全てを諦め、全てを受け入れ海に沈む」「悪くない結末かもしれないな、ハハハハハハ!」
酒に漬けた帽子
強い酒の匂いがする三角帽子、その形はかつての持ち主を象徴する。酒に溺れる副船長は終日酔っぱらったままにいる。その身に酒臭が染み込み、口からは千切れた記憶が囁かれていた。だが船師はちっとも気にせず、ただ微笑む。依然として彼に重任を任せた。「だって俺らは皆、なんもねぇ奴らだからな。ハハハハハ!」「酒がしみついた帽子は嵐に巻き上げられ、千波万波に飲み込まれ」「やがて故郷を失う者は、無欲の争いを続け」「追憶の海で無くなった物を、彼らは深邃の海で取り戻そうとする」「風もよし、海もよし。とうとう見つけた。」「夢の中でさえ俺らを食いつく獣…」「今こそ敵討ちの時、帆を上げろ!」
浮沈の杯
少し色落ちした上質な盃、海淵の砂で磨かれたもの。上質な盃が航海士の手から滑り落ち、海にほんの少しの水しぶきを立てた。大量の魚の群れで、光が薄れる海淵で、一体何を経験したのだろう?静寂で暗い路地で、花壇の柵前で、一体何を経験したのだろう?金の盃はゆっくりと、海に潜む怪物の夢に、船の上の航海士の夢に沈んでいった…「この罪はあなたから被せられたもの、この屈辱はいつか必ず返させてもらう」月明かりが青宝石の眼とまばゆいばかりの傷跡を照らす。彼の記憶の中にある彼女の顔は、明るくて美しかった。しかし彼は当時のことを忘れてしまい、悔しさだけが残った。「ところで、過去を忘れるのはこれで何回目だろう…」「過去のことを言ったってどうにもならないだろ!」「すべての死は無駄であり、救いはないのだから。」
追憶の風
不吉な赤い羽根。死の兆候かもしれない。ある日、海獣の残骸と共に海岸に打ち上げられた。不真面目な航海士は璃月の出身ではなく、灰色の国である貴族の出身だった。かつては貴族だったと言われていたが、あることで一族に恥をかかせ、追放された。しかしそれも無稽な伝説である。彼が港に着いたとき、手にあったのは一本の細い剣だけだった。それ以外に、青宝石色の小さな羽が一つ、古びたマントに飾ってあった。その後、彼は船師と共に海を渡り、嵐、海獣、そして波と戦った。かつて青宝石の色をした羽は、真っ赤な血で染められ、大海の塩気が染み込んでいた。そして最期のとき、彼は強い酒に覆われていた過去をはっきりと思い出した。波に流れる砂の下に現れた宝のように…
堅い銅のコンパス
海の男が使う銅色の羅針盤。波に揺られる一生で、持ち主の心想を指す。じだらくな船師はかつてこの羅針盤で巨船を引き、危険な海域を超克し、巨大な渦潮を征服した。奔放な笑い声から滲み出た恨みと酒、死を求める結末で、落魄れた者を導いたこともあった…「小賊はいずれ絞首台行きだ…お前らの歌はこう歌うよな?」「居場所さえあれば、魚の餌になっても構わない——」「船隊に入った時にこの船と契約を結んだじゃないか?」「その記憶も酒に洗われたのか?ハハハハハ!」「忘れてなきゃいい。さあ、契約を果たす時だ。」「ああ、それでいい。もうどうだっていいんだ…」