キャラクター詳細
ロックはフォンテーヌから伝わってきた文化で、璃月港の人間にとっては新しい芸術の1つだ。そして、辛炎はこの芸術の先駆者と言われている。
夜になると、彼女は手作りの楽器を背負い、手作りのステージに立ち、観客に自作の曲を演奏する。
彼女の曲は彼女自身のように率直で豪快で、自信と誇りに満ちていた。
彼女の音楽センスは良いとは言えないが、彼女の熱狂的なファンは、彼女と共にステージを盛り上げ、声と体で日中のストレスと悩みを発散する。
辛炎が我を忘れる時に、彼女の神の目から放出される炎は、まるで夜空を白昼に変える程であった。
「天才ロックミュージシャンであり、場を盛り上げる名人でもある」
「スチームバード」新聞社はかつて、辛炎をこう評価した。
璃月で生きていくのは簡単なことではない。だが、辛炎は俗世に捉われている人々に向かって告げるのだ——
ロックすれば問題ないと。
キャラクターストーリー1
辛炎の演奏は常識にはまらない。あらゆるものが彼女の楽器になる。
ステージの柱、床、観客の叫び、そして神の目の火花と爆発など、なんでも彼女のロックの一部だ。
臨時のステージは、毎回ライブの途中で燃えてしまい、熱気を纏った黒い木炭だけを残す。
千岩軍が今まで何度も注意してきたが、辛炎は無視し続けたため、見回りを強化し辛炎のライブを止める方針が定まった。
頭脳と体力の勝負、勝者はいつも辛炎だ——彼女はいつもライブに最適な場所を見つけ、神速でステージを作り、観客と一緒に盛り上がる。
信憑性の高い噂によると、多くの千岩軍のメンバーが辛炎のライブを止めようとしているうちに、彼女の「ロックの魂」に惹かれて、結局彼女の熱狂的なファンになったという。
そのため、辛炎はいつも事前にこれらの「ロックフレンド」から千岩軍の見回り計画の情報を手に入れ、無事に見回りの目から逃れることができているわけだ。
そうこうして、始終なんの成果もなく、ライブで怪我人が出ることも聞かないため、千岩軍は辛炎の行為を黙認するようになった。
キャラクターストーリー2
辛炎は大きな体と、黒い肌、鋭い目つきをもっている。ロックの心境を保つため、彼女がいつもステージに立つときは、奇抜すぎるファッションをしている。
普段、街を歩いている時、他人から見れば、辛炎はいつも怖そうな顔をしていて、まるで乱暴なチンピラのように見えた。
彼女が列を並んでいると、前の人は必ず慌てて避け、順番を譲ってくれる。
誤って子供と目が合ってしまったら、子供はすぐに親の後ろに隠れて大声で泣き始める。
辛炎が何もしていなくとも、強面の彼女は、いつも濡れ衣を着せられる。
辛炎は特に他人の目を気にしていないが、他人を驚かせたり、迷惑を掛けたりすることはよくないと彼女は思っている。そのため、彼女はいつも現状を変えようとしていた。
毎日起床すると、彼女は鏡を見ながら、眉間のシワと目つきを和らげるマッサージをしている。
それに、鏡に向かって笑顔の練習や上品な表情と喋り方の練習もしている。
練習を重ねた彼女はある日、いじめの現場に出くわし、迷わず助けた。
そして、自分が一番優しいと思った笑顔を浮かべながら、子供の頭を優しく撫でた。
その子は確かに一瞬で静かになった——
正確に言うと、その子は魂が抜けるほど驚き、ズボンまで濡らしてしまった。
いじめっ子たちも、蜘蛛の子を散らすようにして逃げ出した。
「あの怖いババア、人食いの鬼になったんだ!早く逃げろ!!」
「おい、誰がババアだー!鬼ってなんだー!」
怒りの咆哮により、練習は全て台無しとなった。
キャラクターストーリー3
辛炎が全ての物事を判断する基準は二つある。「ロック」か「ロックじゃない」か。
それが正義や勇気に溢れているなら「ロック」。騙しや盗み、背を背けることは「ロックじゃない」。
ロックの精神の中には反発や反抗が含まれているが、もしそれが道徳に反することであれば、それも「ロックじゃない」方に分類される。
具体的な判断基準は、彼女に委ねられている。その時の結果でも変わるし、彼女の気持ちで変わる事もある。だが、この二つの基準は明確なものに変わりはない。
凶悪な外見のせいで、辛炎には友人がほぼいなかった。「万民堂」の香菱は、彼女が意気投合できる数少ない人物の一人だ。
辛炎が「万民堂」を訪れるには、特別な理由があった。そこに行けば、作曲のインスピレーションを得られるからだ。
香菱が新しい料理を開発する度、他人と違って辛炎は積極的に試食した。
味わった事のない酸味甘味苦味辛味、それらが舌の上で爆発する時、彼女の脳内ではインスピレーションが迸る。
「香菱、あんたまたロックな料理を作ったな!」
辛炎にとって、これは最高の評価だった。だが、それを聞いた香菱は、どこか不機嫌そうな様子であった。
キャラクターストーリー4
永遠に変わらないロックのテーマは、反抗である。
辛炎が抗いたかったのは実在するなにかではなく、「先入観」という名の手枷だった。
辛炎は貧しい農家に生まれた。両親は彼女に高い期待を託し、いつも一番いいものを彼女のために残していた。彼女が雀から輝く鳳凰になるのが、両親の夢だった。
——当然、この「鳳凰」とは、人々が考える一般的な鳳凰の姿を意味していた。
だがそんな思いに反して、辛炎は普通の女の子よりも大きく成長し、外見もお世辞にも「可愛い」という言葉では、形容できなかった。女の子が一通り身につけなければならない料理、家事、縫物、どれを取っても上手くできなかった。
「先入観」に幼少期を支配されていたからこそ、辛炎は「先入観」の本当の恐ろしさをよく知っていた。
ロック歌手になっても、彼女は、幼い頃できなかったことを諦めなかった。
負けず嫌いだったのもあるが、それよりも、才能がなかったと諦めることも、彼女にとっては「先入観」の一つだったからだ。
少し前、ファンの一人である雲菫が、辛炎に招待され彼女の家を訪れた。
ドアを開けたのが辛炎でなければ、雲菫は家を間違えたのかと勘違いする所だった。
部屋は埃一つ落ちておらず、窓は磨かれ、部屋に丁寧に並べられた置物は、ほとんどが手作りのように見えた。
台所が濡れていることから、恐らく少し前まで料理をしていたのだろう。ベッドの前には、途中まで織られた虹色の布が置かれており、辛炎が演出に使う衣装の装飾によく似ていた。
まるで、たおやかな女性の部屋のようで、どこにもロックの気配を感じられなかった。
「ロック」とのイメージからあまりにもかけ離れているため、ファンには受け入れ難いのではないかと、辛炎は心配した。
だがあの後、雲菫の応援や追っかけは、ますます熱烈なものとなったように感じた。
キャラクターストーリー5
辛炎の目には、大人たちは「先入観」を恐れるために、全力を出し切れず、いつも不安がっているように映っていた。
何のために生活しているのか、未来はどこに向かっているのかも知らないようだった。
彼女はこの考えを歌にしたが、大人たちの冷たい嘲笑をもらっただけだった。
「小娘に人生の何が分かるんだ?」
辛炎は特にそれらを気にすることはなかった。この嘲笑も、彼女の年齢に対する「先入観」からきているものに過ぎないからだ。
仮に「先入観」が簡単に覆せるようなものなら、それは反抗する価値のないものだ。
彼女は、ロックは小さい種だと信じていた。一度のステージで、きっと数人の大人の心にロックの芽が生える。
その人達が次の日目覚めた時、心に何か変化が起きているのかもしれない…
ほんのわずかな変化で構わない…もしかしたら、彼らは自分達を捕えていた「難題」は、ただの茶碗に映る風景なのだと気付くのかもしれない。
もちろん、観客と「ロックフレンド」以外、誰もこれが「ロック」のおかげだと思わないだろう。
だが、人々は食後の談笑の時にきっとこう言うのだ。
「あのロックを歌っている小娘は面白いな」
辛炎の楽器
辛炎がメインで使う楽器——独特な形をした琴は、彼女の手作りだ。それは、フォンテーヌから伝わったロックの楽器を土台に、彼女自身がさらなる改造を加えたものだった。
例えば、彼女は楽器の後頭部に、三日月型の斧を付け加えた。いざという時に、すぐに戦えるようにするためだ。
更に、「神の目」の力も楽器の中に組み込み、簡単に炎を噴射し、火花を散らせるようにした。
そして、実は楽器の内部も炎を噴射できるのだ。万が一、楽器が他人の手に落ちても、悪用されないための保険として、自爆するようになっている。
…それ以外にも、数えきれない程の機能がある。
つまり、これは世界で唯一の楽器であり、奏でる音楽も世界で唯一のものだ。
——ん?この改造は、音楽とあまり関係がないと?そう思うなら、君はもう少し辛炎のロックに耳を傾け、その真意を理解した方がいい。
神の目
璃月港は辛炎にとって、しっくり来ない場所であった。「ロック」と遭遇した日、彼女は己の帰る場所を見つけたのだ。
だが、彼女が生まれ育った場所には、ロックの文化はない。ここにいる人達に自分の音楽を受け入れてもらうには、人の注目を集めるしかない。
彼女は音楽の世界に深く入り込み、人々の心を震わす方法を探した。数えきれない程の楽器を壊れるまで弾き、両手にはタコができた。だが、それでも結果は予想通りのものだった。
「うるさいぞ!」
度重なる悪評に、辛炎の頭に諦めの文字が浮かんだ。
彼女は天衡山に座り、夜の璃月港を見下ろした。炎は町の明かりを灯しているが、「ロック魂」を灯してはくれない。
彼女は、どこか遠くのロックを理解してくれる場所に行こうと考えた事もある。しかし、これは逃げることを意味し、ロックの精神を反することを意味する。
——彼女はここに残って、本当の意味で璃月港を照らす「炎」となるのだ。
彼女は、炎を使い人々の心を震わせる試みを始めた。音楽の中に火花と爆発を織り込んだのだ。
だが、普通の人にとって、炎をコントロールするのは簡単なことではない。
練習中、彼女は数えきれなほどの火傷を手に負い、楽器を吹き飛ばした。だが、それでも彼女は毎日、天衡山の上で練習を続けた。
もしかすると、神もこの全く新しい音楽が、七国を席捲することを期待していたのだろう…
燃え滾る「神の目」は、龍の絵に眼を入れた。
辛炎は全速で山を駆け下り、璃月港で一回目のロック音楽会を開いた。
火花と爆発にのって、彼女の音楽の道は始まった。